現代社会と結婚

東京で開催された Ideas and Questions Cafe というイベントで私が行った話題提供の内容です。このイベントは、参加者同士で多様な視点を共有し、議論を深めることを目的としています。また、多くの参加者にとって新鮮な切り口となるキリスト教的な視点を紹介するのも特徴の一つです。英語版の内容はこちらからご覧いただけます。


今日は、現代社会において結婚にどんな意味があるのか、あるいは意味があるのかどうかについて考えます。文化人類学者キャロル・エンバーは『Anthropology』で結婚を「社会的に認められた性的・経済的な結びつきで、ある程度の永続性が想定され、夫婦およびその子どもたちに権利と義務が伴うもの」と定義しています。

もちろん限られた時間の中で結婚に関する多様な考え方を十分に掘り下げることはできませんが、ここでは結婚を考える非常に大まかな3つの見方を取り上げたいと思います。

伝統的な視点

1つ目の視点は、“伝統的”と呼ぶものです。これには、産業化以前・啓蒙主義以前の考え方という意味があり、特定の宗教に結びつくものではありません。文化人類学者のエンバーは、歴史を通じてほぼすべての文化に何らかの形の結婚が存在し、違いがあるにもかかわらず、共通のパターンが現れると述べています。いくつかの例を紹介したいと思います。

  • 子孫を残す手段
    • 子どもをもうけることは結婚の主な目的とみなされ、子どものいない結婚は悪いものと考えられていた。紀元前1〜2世紀のローマの記録には、子どもを産ませるために結婚を強制すべきだと主張する政治家たちがいたことが示されている。
  • 父系を確立する手段
    • 結婚は「この子は誰の子か?」という問いに答えるものだ。子どもは、その女性とその夫に属するものとされる。
  • 家族同士の社会的な結びつき
    • 多くの社会では、結婚は個人同士ではなく“家族同士”の取引とみなされ、相互の義務を生み出すものとされている。
  • 大人になるための通過儀礼
    • 例えば次のような言葉があります。
      「妻を持たない男は、男ではない。」
                            — エレアザル・ベン・アザライ(1世紀の律法学者)
  • 経済的安定と利益を得る手段
    • 農業社会では、配偶者を選び、子どもをもうけることが、家庭の生産性を高めた。
      また、結婚は資産を世代間で移転する流れを管理する役割も果たしていた。

まとめると、伝統的な結婚観は、個人よりも家族や社会の利益を重視し、経済的安定を重んじるものでした。

現代的な視点

次に、「現代的」と呼べる結婚観を見ていきます。これは1700年代の啓蒙思想に根ざし、現在の結婚の姿を形作ってきました。主な特徴を挙げます。

  • 主に私的で契約的なもの
    • 結婚は、二人の個人の間の合意 -つまり私的な契約とみなされる。このため「結婚はただの紙切れに過ぎない」という考え方が生まれるのである。
  • 永続性への期待が大幅に低い
    • かつて結婚は永久的であることが期待されていたが、今日ではそれが一般的な規範ではなくなっている。
  • 二人の個人を重視
    • 現代の結婚は、家族ではなく、二人の自立した個人に焦点を当てている。
  • 性的行動を規制しない
    • 結婚はもはや性的行動を定義したり制限したりするものではない。結婚前に性行為が行われることもあれば、結婚の中で性行為が必須ではないと考えられることもある。
  • ステータスを示す
    • 結婚は今も社会的地位を示すものではあるが、現在では家族ではなく個人を反映するものとなっている。

全体として、現代の見方では結婚は社会や家族ではなく、夫婦自身によって定義される私的な取り決めとみなされており、現行の法律もこれを反映しています

キリスト教的な視点

最後に、三つ目の視点として“キリスト教的”と呼ぶものを紹介したいと思います。私自身、結婚しているクリスチャンとして、キリスト教が他の文化と相互作用してきたことは承知していますが、ここではキリスト教の聖典そのものが何を語っているかに焦点を当てます。

  • 独身を肯定する
    • キリスト教は結婚を重んじる一方で、独身も肯定している。イエス自身も未婚であった。
  • 子どもを必須とはしない
    • 子どもは肯定的に見られますが、結婚の価値を決める必須条件ではない。
  • 家族同士を結びつけない
    • 「それゆえ男は父母を離れ、妻と結び合い、二人は一体となる」(創世記2章24節)
      これは、結婚が既存の家に吸収されるのではなく、新しい家庭を形成することを示している。
  • 神と人間の関係をモデルにする
    • 結婚は神の契約的な愛、特にキリストが教会に示した愛を映し出す。
  • 自己犠牲的な愛
    • 聖書は夫婦に犠牲的な愛を求め、パウロは「夫は自分の体のように妻を愛しなさい」と書いている。これは性的関係にも及び、夫婦は互いに自分の体を明け渡しており、相手を拒んではならないと教えている。
  • 個人的で生涯にわたるコミットメント
    • イエスは「神が結び合わせたものを、人が引き離してはならない」と言った。(マルコ10章8–9節)これは生涯のコミットメントを強調し、軽々しい離婚を否定している。

したがって、基本的なキリスト教的見解は、現代的なものや伝統的なものとは大きく異なり、結婚を神聖なものと捉え、両方のパートナーから深い個人的な献身を求めるものです。時間の都合上、大きく簡略化しましたが、いまからの時間、皆さんが良いディスカッションをされることを願っています。

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